紹介報酬・価格表示と業法の線引き

宅地建物取引業や不動産鑑定業に当たるかどうかは、注記や宣言ではなく、何を、誰の求めで、どんな報酬で行うかという実態で決まります。

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「鑑定評価ではありません」と書き添えても、有料で特定の物件の価格を金額で表示していれば、要件はそろってしまいます。

このページの要点

  • 他人の求めに応じ報酬を得て特定の不動産の経済価値を価額に表示することを業とすれば、不動産鑑定業の登録が要る(鑑定評価法2条2項・33条)。
  • 有料の診断は利回りの比較で示す、価格帯は無料で表示して有料の機能と切り離す、などで要件から外す設計を選ぶ。
  • 報酬が成約に連動するほど媒介と見られやすい。開始時は定額の広告掲載料や問合せ件数に応じた広告料が安全。
  • 「媒介をしない」確認条項は、報酬の発生の仕組みと実際の関与の仕方と矛盾なく書いて初めて意味を持つ。

結論:「媒介ではない」「鑑定評価ではない」と書くだけでは足りない

不動産の情報を扱う事業では、契約書や利用規約に「当社は不動産の媒介を行いません」「本サービスは不動産鑑定評価ではありません」と書けば業法の問題を避けられる、と考えられがちです。けれども、宅地建物取引業や不動産鑑定業に当たるかどうかは、注記や契約書の宣言ではなく、何を、誰の求めで、どんな報酬を受けて行うのかという実態で判断されます。注記は、実態が業法に当たらない設計になっていることを利用者に説明する道具であって、実態を変えるものではありません。

事務所は、投資用の区分マンションの価格が割安か割高かを判定するWebサービスの利用規約一式を作成する案件で、二つの業法の問題を事業者にご判断いただく事項として整理しました。一つは、有料で特定の物件の価格帯を金額で表示する設計と不動産の鑑定評価に関する法律、もう一つは、物件を販売する提携先から成約に連動した報酬を受け取る設計と宅地建物取引業法です。また、建築プロジェクトの推進を支援する契約で、土地の情報を活用した案件に成功報酬を定める際にも、宅地建物取引業に当たる行為を行わないことを確認する条項を置いています。

このページでは、これらの書類から、価格の表示と紹介の報酬について、契約書や規約の設計の段階で確かめることを紹介します。許可・免許・登録の申請の手続は扱わず、契約書の条項に関係する範囲での線引きに限ります。売買の契約書は不動産売買と合意書、協力会社と元請先の直接取引の防止は建物管理の業務委託のページで扱います。

有料で物件の価格を表示するサービスと鑑定評価法

不動産の鑑定評価に関する法律は、「不動産の鑑定評価」を、不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することと定義し(2条1項)、「不動産鑑定業」を、自ら行うか他人を使用して行うかを問わず、他人の求めに応じ報酬を得て不動産の鑑定評価を業として行うことと定義しています(同条2項)。不動産鑑定業者の登録を受けない者は不動産鑑定業を営んではならず(33条)、これに違反すると1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処され、又は併科されます(55条2号)。

このサービスの相談時点の設計は、利用者が入力した特定の区分マンションについて、相場の利回りから見た価値を判定して「割安・相場通り・割高」を示し、相場価格の範囲を金額で表示し、2回目以降の診断から料金を受け取る、というものでした。事務所は、条文の要件に一つずつ当てはめて次のように整理しました。

条文の要件への当てはめ(相談時点の設計)

要件相談時点の設計当てはまるか
不動産の経済価値を判定する入力された特定の物件について、相場の利回りから見た価値を判定し、割安・相場通り・割高を示す当たり得る
その結果を価額に表示する相場価格を「○万円〜○万円」、相場との差を「○万円ほど高い」と金額で表示する当たり得る
他人の求めに応じ報酬を得て利用者の求めに応じ、2回目以降は1回ごと又は月額の料金を受け取る当たり得る
業として行う不特定多数の利用者に反復継続して提供する当たり得る
鑑定評価に含まれない行為(52条)鑑定評価に含まれないとされるのは、農地・採草放牧地・森林の取引価格の評価、損害保険の目的である建物の保険価額などの算定、建築士事務所の業務としての建物の鑑定に限られる当たらない

そのうえで、インターネット上の自動の価格査定サービスには、無償で提供する形をとっているものが多いことにも触れました。結論として、相談時点の設計は不動産鑑定業者の登録を受けていない者による不動産鑑定業に当たるおそれが高く、「鑑定評価ではありません」と書き添えるだけではこのおそれは解消しない、とご報告しています。

不動産会社の無料査定とは何が違うのか

不動産会社が売却の相談を受けて行う価格の査定は、宅地建物取引業法に基づく媒介の業務の一部として、売買すべき価額について意見を述べるものです。同法は、宅地建物取引業者がその価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない、と定めています(34条の2第2項)。ご説明書では、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」が、根拠を書面で示すときは鑑定評価書でないことを明記すること、査定に要した費用は依頼者に請求できないことを定めている点を引き、不動産会社の査定は「媒介の一部として、無料で」行われることを前提に、鑑定評価とは別のものとして扱われている、と整理しました。

つまり、価格の表示そのものに料金を受け取る事業は、不動産会社の無料査定と同じ扱いを受けることができません。宅地建物取引業の免許を持たず、媒介も行わない事業者が、価格の表示を有料の商品にすると、鑑定評価法の要件がそろってしまうのです。この区別を理解しておくと、どこを変えれば要件から外れるのかが見えてきます。

できること・避けること・選択肢

価格の表示についての選択肢(ご説明書の整理)

設計内容評価
A 有料の診断は利回りの比較で示し、金額は表示しない「評価利回り○%/参考利回り○〜○%」「参考利回りより低い(割高の傾向)」のように示す。料金体系は維持でき、結果画面の表示を変えるおすすめ。利回りの比較は価額の表示ではないため、2条1項に当たりにくい
B 価格帯の表示は全員に無料で提供し、有料は別の機能にする診断履歴の保存・比較、収支の試算、チェックリストなどを有料にする。無料の価格表示が有料の機能や提携先の報酬と一体になっていると「報酬を得て」に当たると見られる余地があるため切り離す安全
C 現在の設計のまま、公開前に国に照会する産業競争力強化法のグレーゾーン解消制度で、所管省庁に事業が規制に当たるかを照会する時間を要する。公開時期との関係ではA又はBで始めて回答を待つ形が現実的
D 現在の設計のまま公開する33条違反とされれば刑事罰のほか、決済サービスのアカウント停止や提携先との関係の悪化も考えられるおすすめしない

避けるべきこととしては、有料の診断で特定の物件の価格を金額で表示することのほか、「相場価格」「適正価格」「査定額」という呼び方(価格を判定したと受け取られ、鑑定評価との区別がいっそう難しくなる)、結果画面での「売却価格はこの価格から約○万円を差し引いて考えるのがよい」といった具体的な金額の助言を挙げました。反対にできることとして、利回りを比べて示すこと、価格帯を無料で表示すること、計算式を示して利用者が自分で計算できる道具を提供することを示しています。選んだ設計に合わせて、利用規約の診断の定義・内容・性質・料金の条と、特定商取引法に基づく表記の該当欄を書き換え、結果画面の文言例もあわせて用意する段取りにしました。

成約に連動する紹介報酬と宅建業法

宅地建物取引業法は、宅地建物取引業を、宅地若しくは建物の売買若しくは交換、又は売買・交換・貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものと定義し(2条2号)、免許を受けない者は宅地建物取引業を営んではならないとしています(12条1項)。これに違反すると3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処され、又は併科されます(79条2号)。

割安・割高を判定するサービスに、物件を販売する提携先の広告を載せ、成約に応じて報酬を受け取る設計について、ご説明書では、国の判断の例として、産業競争力強化法のグレーゾーン解消制度による回答(平成28年6月15日と同年12月27日に公表されたもの)を紹介しました。事業者が顧客に不動産業者の情報を提供し、成約時に手数料を受け取る事業について、物件の説明や契約成立に向けた取引条件の交渉・調整を顧客と不動産業者が直接行い、事業者が一切関与しない場合は宅地建物取引業に当たらない、とされたものです。ただし、これらの回答は照会した事業の事実関係を前提とした判断であり、そのまま当てはまるとは限りません。

報酬の方式と媒介と見られるおそれ(ご説明書の整理)

報酬の方式媒介と見られるおそれ評価
定額の広告掲載料報酬が取引の成立と結び付かず、純粋な広告と説明できる最も安全
問合せ件数・クリック数に応じた広告料送客の対価であり、契約の成立とは切り離されている安全
成約時の成果報酬報酬が取引の成立に連動するため、実態としてあっせんをしていると推認されやすい。媒介と判断されれば業法違反となるほか、報酬の約束が無効とされ請求できなくなるおそれもある注意

結論として、事業者が売主と買主の間に入る行為を一切行わず、利用者は広告から提携先に直接問い合わせる形であれば、成約時に報酬を受け取ることが直ちに媒介に当たるわけではないものの、報酬が成約に連動するほど媒介と見られやすくなるため、開始時は定額の広告掲載料か問合せ件数に応じた広告料とすることをおすすめしました。

契約書に「宅建業に当たる行為をしない」と書くときの組み立て

それでも成果報酬を採る場合に必要な措置として、ご説明書では次の点を挙げています。

成果報酬を採る場合に必要な措置

  • 提携先との広告契約に、事業者は物件の説明、取引条件の交渉・調整その他契約の成立に向けた行為に一切関与せず、利用者への勧誘・助言も行わないこと、物件の説明と交渉は提携先と利用者の間で直接行うことを明記する。
  • 診断結果の画面から特定の提携先に誘導しない(「割安でした→この会社へ」のような導線を置かない)。広告欄は診断結果とはっきり分ける。
  • 提携先から受け取る成約の情報は、件数・金額など個人を特定しない形にする。
  • 広告主が宅地建物取引業の免許を持っていることを確認してから掲載する(利用規約にも定める)。

建築プロジェクトの推進を支援する契約では、支援する側の業務が営業紹介・案件紹介・媒介・仲介を目的とするものではなく、事業組成・技術・施工検討・プロジェクト推進の支援を内容とすることを相互に確認し、支援する側は宅地建物取引業法上の媒介、代理、重要事項説明、契約条件の交渉、売買契約の締結の代理その他宅地建物取引業に当たる行為を行わない、と定めました。土地の情報を活用する案件の条でも、土地の売買の媒介・代理・重要事項説明など業法上必要な行為は、必要に応じて免許を持つ者が自己の責任で行い、支援する側はその業務や報酬を代わるものではない、と明記しています。

こうした確認の条項は、当事者の間で業務の範囲を明らかにし、実際の運用をその範囲にとどめるための約束として意味を持ちます。一方で、ご説明書で整理したとおり、媒介に当たるかどうかはあっせんの実態で判断され、報酬が売買の成立に連動するほど媒介と見られやすくなります。確認の条項を置くときは、報酬が何の対価で、いつ、何を基準に発生するのか、支援する側が売主・買主のどちらとどこまで接触するのかを、確認の条項と同じ契約の中で矛盾なく書いておく必要があります。条項の文言と、報酬の発生の仕組みと、実際の動き方の三つがそろって、初めて「媒介をしない」という約束が説明できるものになります。成功報酬を定める契約では、報酬の算定に必要な契約書や契約金額などの資料を開示する義務もあわせて置くことが多く、建築プロジェクトの推進支援の契約でもその定めを置いています。開示を求める資料の範囲が売買の内容に深く及ぶほど、支援する側が売買にどこまで関わっているのかが問われることも意識しておきます。

割安・割高の判定サービスでは、書類の作成の前に、13部・101問のヒヤリングで、サービスの機能・料金・提携先との関係・利用者の範囲などを確認しました。その中で、媒介・鑑定・出資の募集・助言・預り金・貸付のいずれかに当たる機能があるかを最初に問い、回答をもとに業法の整理を行っています。草案に向けたおすすめ案としては、診断の結果は参考情報であって鑑定評価ではなく、将来の価格や収益を保証しないことを規約と結果画面の双方に示すこと、未成年者は提携先への紹介の機能を使えないことなどを挙げました。業法の整理の結果は、規約の条文だけでなく、結果画面の文言や広告欄の配置にまで反映させてはじめて意味を持ちます。

ヒヤリングで確かめること 価格の表示や紹介の報酬を設計する前に

  1. 特定の物件の価格を金額で表示するか。その表示に料金を受け取るか。鑑定評価法の「価額に表示」と「報酬を得て」の要件に関わります。
  2. 価格の表示が、有料の機能や提携先からの報酬と一体になっていないか。無料の表示でも、報酬と結び付いていると見られる余地があるためです。
  3. 提携先からの報酬は定額か、件数に応じるか、成約に応じるか。媒介と見られるおそれの大きさが変わります。
  4. 物件の説明や条件の交渉に、事業者が関与する場面はあるか。あっせんの実態があるかどうかを判断する前提です。
  5. 広告主や提携先は宅地建物取引業の免許を持っているか。掲載の条件として規約に定めるかどうかを決めます。

書類を作る前に確かめる業法の境界

このサービスでは、利用規約などの書類の作成に入る前の提案の段階で、サービスの内容がどの許可・免許・登録の問題に触れるかを、次の順に確認しました。いずれかに当たれば、利用規約をどれだけ整えても事業そのものが法律違反になり得るため、書類の内容より先に事業の設計を確かめる必要があるからです。

  1. 売買・賃貸の当事者の間に入り、契約の成立に向けたあっせん(条件の交渉、内見の調整など)を行うか。又は自ら宅地建物を売買するか。当たれば宅地建物取引業の問題で、報酬の名目や支払者を問わず検討する。
  2. 個別の不動産の価格を算出し、価額として利用者に示すか。算出と提供の方法によって、鑑定評価との区別が問題になる。有償で個別の物件の価額を判定する形は特に注意する。
  3. 投資家から出資を募り、又は他社の出資の募集を紹介・取次ぎし、不動産の収益を分配する仕組みに関与するか。当たれば不動産特定共同事業法の許可(3条1項。小規模の事業は41条1項の登録)や金融商品取引法の登録(29条)の問題になる。
  4. 有価証券の価値や投資判断について、会員などに有償で助言や情報提供をするか。当たれば投資助言の業務の登録の問題になる。
  5. 利用者のお金を預かり、別の人に渡すか(家賃や代金の収納の代行など)。お金の流れによっては資金移動業の登録(資金決済法37条)との区別が問題になる。
  6. お金を貸す、ローンを紹介する、代金を立て替える、家賃債務を保証するか。当たれば貸金業の登録(貸金業法3条1項)などの問題になる。

すべてに当たらなければ、情報の提供や分析の道具の提供という、これらの許認可を要しない役務の提供として位置付けられます。その場合は、利用規約で「当社が行わない業務」(不動産の売買・賃貸の媒介、投資の勧誘・助言、資金の貸付・預託など)を明記し、この位置付けを書類とサイトの表示で一貫させることが大切です。物件の検索や比較の機能では、掲載情報の出所と正確性の限界、掲載事業者との取引は当事者の間で行うこと、当社は媒介を行わないことを、価格の推計の機能では、統計的な推計値であり不動産鑑定士による鑑定評価ではないことに加えて個別の物件の価額を判定して示す形を避けること、結果に基づく判断は利用者が行うことを、収支の試算の機能では、将来の収益を保証しないこと、前提条件、投資判断の助言を行わないことを、それぞれ書類に反映する形を提案しました。提携先に利用者を送客する場合は、個人情報の第三者提供の同意を取得する設計も必要です。なお、不動産鑑定士の鑑定評価そのものは、契約の中で活用されることもあり、建築前の一棟借りの予約契約では、賃料の改定の協議が調わないときに鑑定評価額を基礎として交渉を続ける形を採っています(建物賃貸借予約)。

紹介報酬と業法で起きがちなこと

よくあるご質問

AIなどで物件の価格を表示するサービスに資格は要りますか?

設計によります。他人の求めに応じ報酬を得て、特定の不動産の経済価値を判定し価額に表示することを業として行うと、不動産鑑定業に当たり、登録が必要になります(鑑定評価法2条2項・33条)。事務所の整理では、有料の診断は利回りの比較で示して金額を表示しない、価格帯は無料で表示して有料の機能と切り離す、といった選択肢を示しました。

「鑑定評価ではありません」と注記すれば足りますか?

足りません。鑑定評価法の要件に当たるかどうかは、価額の表示と報酬の有無という実態で判断されます。注記は、実態が要件に当たらない設計になっていることを説明する道具で、実態を変えるものではありません。

不動産会社の無料査定とは何が違うのですか?

不動産会社の査定は、媒介の業務の一部として価額について意見を述べるもので、根拠を明らかにする必要があり(宅建業法34条の2第2項)、査定の費用は依頼者に請求できない扱いとされています。免許を持たない事業者が価格の表示そのものに料金を受け取る場合は、この扱いを受けられません。

土地の情報を紹介して成功報酬を受け取ってもよいですか?

報酬の決め方と関与の仕方によります。報酬が売買の成立に連動するほど、あっせん(媒介)と見られやすくなります。物件の説明や条件の交渉に関与しないこと、報酬を定額や問合せ件数に応じた形にすることなど、実態と報酬の仕組みを業法に当たらない形に設計することが前提です。

契約書に「媒介ではない」と書けば足りますか?

それだけでは足りません。確認の条項は業務の範囲を当事者の間で明らかにする意味がありますが、媒介に当たるかどうかは実態で判断されます。報酬が何の対価でいつ発生するのか、売主・買主とどこまで接触するのかを、確認の条項と矛盾なく書き、運用もその範囲にとどめる必要があります。

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